介護をしていると、「どうしてこんなにイライラしてしまうのだろう」「感情をコントロールできない自分が嫌だ」と悩むことはありませんか?
親や利用者との関わりの中で、暴言や拒否、同じことの繰り返しに直面すると、心の余裕を失いがちです。
しかし、感情は「敵」ではなく「味方」にすることができます。感情と上手に付き合うことができれば、介護者自身の心が軽くなり、介護そのものもスムーズになります。
この記事では、介護家族や初心者の福祉職向けに「感情と上手に付き合う介護術」を解説します。実体験をもとに、感情が動く理由やコントロール法、そして明日から使える実践的な工夫までまとめました。
なぜ介護で感情的になってしまうのか

介護の現場で感情が揺さぶられる瞬間は多くあります。
たとえば、暴言・暴力、提案の拒否、人格を否定されるような言葉、同じ質問の繰り返し…。これらは誰にとっても心を乱す要因です。
さらに、感情的になる背景には以下の要因があります。
- 慢性的な疲労・睡眠不足:体力的に限界を迎えると小さな出来事でも感情が爆発しやすくなります。
- 精神的なストレス・孤独感:「自分の介護は間違っているのでは」という不安や孤立感が心を圧迫します。
- 暴言・暴力の繰り返し:認知症や精神疾患の影響であっても、毎日の積み重ねは介護者に大きな負担となります。
- 強い責任感や完璧主義:「自分がやらなければ」という思いがプレッシャーに変わり、感情の爆発につながります。
- 達成感の不足:成果が見えにくい介護は、無力感や苛立ちを呼びやすいです。
- 経済的・生活的不安:先行きへの不安が心の余裕を奪います。
このように、感情的になるのは「心が弱いから」ではなく、介護そのものが持つ構造的な負担によるものです。
感情を受け入れることから始まる介護

介護において最初に大切なのは、「感情を否定せずに受け入れること」です。
感情を受け入れるメリット
- 自己否定感の軽減:怒りや悲しみを「持ってはいけない感情」と思わず認めることで、心のモヤモヤが和らぎます。
- 信頼関係の構築:相手の感情を受け止めることで「理解されている」という安心感が生まれます。
- コミュニケーションの質向上:感情に共感する態度が、穏やかな関わりを可能にします。
わたし自身も「怒りは悪いもの」と思い込んでいた時期がありましたが、感情を受け入れるようになってからは、自分の心の声を理解できるようになり、ストレスが軽減しました。
感情は「あなたに必要なことを知らせるメッセージ」でもあるのです。
実践!介護現場での感情コントロール法
感情をゼロにすることはできません。ですが、「湧いた感情をどう扱うか」で介護の質は大きく変わります。
すぐに使えるコントロール法
- 深呼吸して一呼吸おく:冷静になる時間を意識的に作る。
- リフレーミング:「拒否される=嫌われた」ではなく「相手に不安がある」と意味づけを変える。
- 俯瞰して自分を見る:「今の私は怒りやすい状態だ」と自分を客観視する。
- 短い休憩をとる:可能であれば介護環境を一時的に離れ、リセットする。
わたしの場合は「自分のクセが出てしまう場面だ」と心の中で言葉にするだけで、冷静さを取り戻すきっかけになります。
感情が湧いている時って、なかなかコントロール方法をうまく活用することが難しいですよね。
でも、これも練習をしていくことで、だんだんとうまくなっていきます。
一回でもいいのでなにか試してみてください。
感情を味方につける3つのステップ
感情は敵ではなく、介護の助けになる「味方」に変えることができます。
- 感情を認識する:「私は今イライラしている」と言葉にする。
- 感情の意味を理解する:「なぜこの感情が出たのか」を探る。
- 行動に活かす:「同じ状況でどう対応するか」を考え、実践する。
感情を「抑え込む」から「活かす」に変えることで、介護は前向きな体験になります。
また、介護だけでなく感情を「認識」して「活かす」ことが出来れば、私生活・仕事の場面など多様な点で活用することができます。
明日から使える感情管理のワンポイント
最後に、明日から取り入れられる簡単な方法をご紹介します。
- ジャーナリング(日記)
感情が湧いた瞬間に書き出すことで、自分の感情のクセや傾向が見えてきます。繰り返しの場面で「また同じだ」と気づけることが、感情のコントロールにつながります。
「書く」というシンプルな習慣は、誰でもすぐに始められる感情管理法です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 介護でイライラしたとき、すぐに落ち着くにはどうすればいいですか?
A. まずは深呼吸してその場を一度リセットすることがおすすめです。可能であれば、数分間その場を離れて水を飲んだり窓の外を眺めたりするだけでも効果的です。「イライラしている自分に気づく」ことが、感情をコントロールする第一歩です。
Q2. 感情を抑え込むのと受け入れるのは、どう違うのですか?
A. 感情を抑え込むのは「なかったことにする」行為で、一時的には穏やかに見えても心にストレスがたまります。対して受け入れるのは「自分が怒っている・悲しいと感じている」と認めることです。受け入れることで、感情の原因や意味を理解し、次の行動につなげられます。
Q3. 介護で感情的になったとき、相手との関係は悪くなってしまいますか?
A. 感情を爆発させ続けると信頼関係は崩れやすいですが、感情的になったことを素直に認めたり「先ほどは感情的になってしまってごめんなさい」と伝えることで関係は修復できます。むしろ正直なコミュニケーションが相手に安心感を与える場合もあります。
Q4. 介護でのストレスを日常的に軽減する方法はありますか?
A. 睡眠・休養をしっかり取ることが第一です。その上で、日記やジャーナリングで感情を整理したり、趣味や仲間との交流で気分転換をすることが効果的です。介護を一人で抱え込まず、周囲に相談することも大切です。
Q5. 感情コントロールがどうしても難しいときはどうすればいいですか?
A. 自分一人で解決しようとせず、専門職(ケアマネジャー、相談員、カウンセラーなど)に相談するのがおすすめです。客観的な視点からアドバイスを受けることで、自分の感情の傾向や対処法が見えてきます。
まとめ
介護で感情的になるのは自然なことです。大切なのは、その感情を否定するのではなく、受け入れ、理解し、活かすこと。
- 感情的になるのは介護特有の背景があるから。
- 感情を受け入れることで、自己否定感が減り、信頼関係が深まる。
- 深呼吸・俯瞰・日記などの工夫で、感情を味方にできる。
- FAQで紹介したような工夫も、ぜひ試してみてください。
感情をうまく扱えるようになると、介護は「つらい時間」から「前向きな関わりの時間」へと変わります。
明日からぜひ、小さな一歩を実践してみてください。