はじめに、親の介護でイライラとしてしまうあなた、「どうしてわかってくれないの?」とそのイライラは自然なことです。
ケアマネージャーとして日々現場でご家族と接していると、「もう、イライラしてしまって・・・」という声をよく耳にします。
例えばこんなケースがあります。
「運動をしてほしいのに、やろうとしない」
「ちょっと外出すれば気晴らしになるのに、全然行こうとしない」
「やってもいないのに“やった”って平気で嘘をつく」
あげればきりがないほど、ご本人の言動にイライラを募らせて、相談を受ける瞬間があります。
ご家族として「良かれと思って」「このままじゃ良くないから」「なんとか良くなってほしい」と願う気持ちは痛いほど伝わってきます。ですが、実際のところご本人の行動や希望がその通りになるとは限りません。
私はケアマネジャーとして、ご本人の意思を尊重しつつ、ご家族の思いも大切にしながら支援にあたらせていただいています。それでも、ご本人とご家族の間にズレが生じる場面は少なくありません。
そんなときに役立つ考え方のひとつが「EQ(感情知能)」です。
今回は、介護の中で起こるイライラや自己嫌悪とうまく付き合うために、EQの視点からできることを紹介します。
なぜイライラしてしまうのか?感情の正体を知る
介護でイライラしてしまう理由はさまざまありますが、その根底にはこんな気持ちがあることが多いです。
- わかってもらえない悲しさ
- 良くなってほしいという焦り
- 自分の思い通りにならない苛立ち
- 介護をする自分に対する無力感
これらの感情が混ざり合って、ついきつい言葉が出てしまったり、後から「また怒ってしまった……」と自己嫌悪になったりすることもありますよね。
まず大切なのは、「イライラすることは悪いことではない」と知ることです。感情はあなたが真剣に向き合っている証拠。大事なのはその感情にどう向き合い、どう扱うかです。
EQとは?感情を整える力
EQ(Emotional Intelligence Quotient=感情知能指数)とは、「自分や他人の感情に気づき、それをうまく活用できる力」のことです。
EQの高い人は、こんな力を持っています。
- 自分の感情を客観的に捉えられる
- 感情に飲み込まれず、冷静な対応ができる
- 相手の気持ちにも気づき、配慮できる
EQは、先天的な才能ではなく「後から鍛えることができるスキル」だというのがポイントです。年齢に関係なく、意識とトレーニングで育てていけます。
感情のセルフチェック|自分の「イライラ」に気づく習慣を
まず取り入れてみてほしいのが「感情のセルフチェック」です。
たとえばこんなふうに、1日の終わりに振り返ってみてください。
- 今日イライラした場面はあった?
- そのとき、どんな気持ちが湧いていた?
- その感情の背景にどんな思いがあった?
「歩いてくれない親にイライラした」と感じたなら、
→「良くなってほしい」「少しでも元気でいてほしい」という願いが背景にあるかもしれません。
このように、感情の奥にある本当の気持ちに気づけると、自然と自分を責めることも減り、気持ちが軽くなります。
視点を変えてみる|「親の人生」と「自分の人生」は別もの
ご家族の中には、親の人生を「自分がなんとかしなければ」と背負いすぎてしまう方がいます。
もちろん、家族としての責任感や愛情から来るものですが、行きすぎると「なぜわかってくれないの?」「言う通りにしてよ!」という気持ちが膨らんでしまいます。
でも考えてみてください。たとえ高齢であっても、親には「自分の人生」があります。
あなたの人生と親の人生は、重なる部分があっても、決して同じではありません。
「自分とは違う価値観があるんだ」と気づくだけで、少し気持ちが楽になるかもしれません。
感情を整える3つのEQ習慣
では、介護のイライラをやわらげるために、どんなEQ習慣が効果的か。以下の3つをおすすめします。
①「今の気持ち」を言葉にする
→ ノートに書いても、声に出してもOK。「イライラしてる」「不安なんだ」と感情を言語化すると、それだけで心が落ち着きます。
②「自分を責めない言葉」を持つ
→「頑張ってるよね」「怒っちゃうときもあるよね」と、自分をいたわる言葉を習慣にしましょう。
③「誰かに話す」
→ 誰かに話すことで、自分の感情に気づき、整理することができます。ケアマネジャーやカウンセラーなど、専門職の力を借りるのもひとつの方法です。
まとめ|感情を味方につけて、心地よい介護を
介護は、思い通りにいかないことの連続です。
でも、感情とうまく付き合えるようになると、
「イライラしても大丈夫」「こうすればいいんだ」と、自分を立て直す力がついてきます。
このブログでは、感情と向き合うための個別相談や、EQを測るための「SEI検査」もご案内しています。ご自身の感情の傾向を知り、よりよい介護スタイルを見つけていきませんか?
「自分の感情」と「親の人生」、どちらも大切にする介護のために。
ぜひ、できることから始めてみてください。